コラム
2026.7.1
海外動向から分析する日本のTikTokマーケティングの未来
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縦型ショートドラマとECの邂逅がもたらす市場構造の変革
こんにちは、studio15でマーケティングを担当している阿部です。
TikTokを中心としたSNSプラットフォームで配信される縦型のショートドラマ。日本においてもエンターテイメントコンテンツの一つとしての地位が確立され、視聴時間の長さから企業とのタイアップや企業が公式アカウントを立てて作品を公開していく取り組みが活発化しています。
海外市場ではそれだけでなく、ショートドラマが広告収益を生み、さらにEC購買へ接続する新しいマーケティングチャネルとして成長しています。
米国においては、ReelShort、DramaBox、ShortMaxなどの話課金型のショートドラマを配信するマイクロドラマアプリ(日本における課金型ショートドラマアプリ)が大きな市場となり、ハリウッド俳優の参入が進んでいるといわれており、縦型ショートドラマの起源といえる中国では、「微短劇」と呼ばれ、2024年には中国本土の映画興行収入を上回る市場規模になったとされ、直近ではECとの連動が活発化してきていることから映像コンテンツの消費構造に大きな変化が起きています。
本記事では、米国や中国の先行事例をもとに、日本のTikTokマーケティングが今後どのように変化していくのかを分析します。
なぜ今、縦型ショートドラマが注目されているのか
新しいメディアやコンテンツフォーマットは、登場初期には「一時的な流行」と見なされることが少なくありません。ラジオ、テレビ、YouTube、スマートフォン動画も、普及初期には既存メディアから過小評価されてきました。
しかし、生活者の視聴習慣、デバイス環境、広告主の投資が重なった瞬間に、新しいメディアは一気に大衆化します。縦型ショートドラマも、まさにその転換点に差しかかっています。
ショートドラマが普及しやすい理由は、大きく5つあります。
1. スマートフォン視聴に最適化されていること
新しいデバイスを購入する必要がなく、ユーザーはすでに日常的に使っているスマートフォンでそのまま視聴できます。
2. 視聴ハードルが低いこと
1話あたり数十秒から数分で構成されるため、通勤中、休憩中、就寝前など、短い空き時間に消費されやすいフォーマットです。ここ数年は長尺コンテンツを早送りで視聴する傾向が強まっていますが、ショートドラマであれば短時間の中に起承転結が詰まっており時代に即したフォーマットであるともいえます。
3. レコメンドシステム、アルゴリズムとの相性
TikTokやDouyin(ByteDance社が提供する中国版TikTok)のようなプラットフォームでは、フォロー数だけではなく、視聴維持率、興味関心などのエンゲージメントに基づいてコンテンツが配信されます。ストーリー性のある動画は「続きが気になる」構造を作りやすく、一度リーチしたユーザーに対して続きが配信されやすく、視聴時間を伸ばしやすい特徴があります。
4. 広告やECとの接続のしやすさ
商品の機能性や価格面を単独で説明するのではなく、登場人物の生活や悩みの中に商品を自然に登場させることで、広告感を抑えながら購買意欲を高めることができます。
5. 制作と改善のスピード
テレビドラマや映画と比べると、縦型ショートドラマは小規模なチームでも制作しやすく、SNS上で反応を見ながら素早く改善できます。さらに生成AIの活用により、企画、脚本、編集、翻訳、ローカライズの効率化も進んでいます。
つまり、ショートドラマは「動画コンテンツ」であると同時に、「広告フォーマット」「認知だけでなく購買に直結するプロモーションツール」「新規IP開発」の性質を持ち始めているのです。
中国市場ではショートドラマが映画市場を上回る規模へ
ショートドラマの先行市場として最も重要なのが中国です。
中国では「微短劇」と呼ばれるショートドラマ市場が急拡大し、2024年の市場規模は約504.4億元規模に達したとされています。
これは同年の中国本土の映画興行収入を上回る水準であり、映像消費の主戦場がスマートフォン上の短尺・連続型コンテンツへ移りつつあることを示しています。
中国のショートドラマ市場を知りたい方はこちら
映画を超えたショートドラマ市場
また、ショートドラマはコンテンツ量の面でも急速に拡大しています。
中国では年間で多数の新作ショートドラマが制作・配信され、恋愛、復讐、家族、職業、ファンタジー、コメディなど、ジャンルの多様化も進んでいます。
かつてのショートドラマは、「低予算」「過激」「課金誘導が強い」と見られることもありました。しかし現在では、ブランドマーケティング、EC、地方観光、IP開発など、より広い領域で活用されるようになっています。
この変化は、日本のSNSマーケターにとって非常に重要です。中国で先行して起きた縦型ショート動画×コマースの進化は、一定の時間差を置いて日本市場にも影響を与える可能性が高いからです。
ショートドラマ、TikTok Shop、TikTok GOのように、海外で発生する新規プロダクトやフォーマットのトレンドを理解していくことは、日本のTikTokマーケティングにおける未来を見極めていく上で重要であるといえます。
中国ショートドラマ市場の進化:課金型から無料広告モデル、そしてEC統合へ
中国のショートドラマ市場は、大きく3つのフェーズで進化してきました。
第一フェーズ:有料課金型の時代
初期のショートドラマアプリでは、数話までは無料で視聴できるものの、続きを見るためには課金が必要になるモデルが一般的でした。
無料部分の終盤に強いヒキ(クリフハンガー)を作り、ユーザーに課金を促す構造です。
このモデルでは、コンテンツの目的は「いかに続きを見たくさせるか」が重要であり、シチェーションで演出しやすい復讐、裏切り、格差、恋愛トラブルなどのテーマが多く見られました。
第二フェーズ:無料広告モデルの拡大
次に広がったのが、無料視聴と広告収益を組み合わせたモデルです。
ByteDance社がDouyinとは別に運営しているHongguo(紅果短劇)などに代表される無料視聴型のショートドラマアプリが成長し、ユーザー課金ではなく広告収益でマネタイズする構造が広がりました。
視聴障壁が下がったことで、より多くのユーザーが日常的にショートドラマを視聴するようになります。この段階では、コンテンツの評価軸も変わります。
課金型では「課金に進ませること」が重要でしたが、無料広告モデルでは「長く見続けてもらうこと」「広告在庫としての価値を高めること」が重要になります。その結果、過激な展開だけではなく、日常系、恋愛、コメディ、家族、職業ものなど、幅広いジャンルの作品が伸びやすくなりました。
第三フェーズ:ショートドラマとECの統合
現在、中国市場で注目されているのが、ショートドラマとECの統合です。ショートドラマの視聴体験の中に、商品購入やブランド接触の導線を組み込む動きが強まっています。
2025年10月には、Hongguo(紅果短劇)にショッピング機能が付与され、ショートドラマは「見るコンテンツ」から「買うきっかけを作るコンテンツ」へ進化しつつあります。
この流れは、TikTok Shopが本格化している日本市場にとっても重要です。
すでに「商品紹介をストーリーの軸にしたTikTok Shop特化型ショートドラマアカウント」はいくつか生まれており、今後「TikTokショートドラマで俳優が身につけていた衣服を視聴しながらその場で購入できる」という未来もそう遠くないかもしれません。

ショートドラマ×ECの代表事例:KANSが示したブランド成長の可能性
ショートドラマとECの統合を語る上で、特に注目されるのが中国の化粧品ブランド「韓束(KANS)」の事例です。
KANSは、Douyin上でショートドラマを活用したマーケティングを展開し、複数のドラマシリーズの中で商品を自然に露出させました。
単なる広告動画ではなく、登場人物の悩みや感情の変化に商品を組み込むことで、視聴者にブランドを記憶させ、購買導線へつなげた点が特徴です。
中国の有力テックメディア『钛媒体』などの報道によると、KANSは2023年、Douyinのトップクリエイター「姜十七」とコラボした5本のショートドラマに5,000万元未満を投資し、合計で50億回規模の再生を獲得。
しかし、この事例の本質はドラマのヒットだけに留まりません。KANSは、このショートドラマを「最強の集客装置(トラフィックのプール)」と位置付け、24時間体制の「LIVEラコマース」と連動させるクローズド・ループを構築したのです。
ドラマによって購買意欲の高まった視聴者を、Douyinのアルゴリズムを通じて24時間ノンストップで稼働する公式LIVE配信ルームへ即座に誘導。
ライブ画面や広告もドラマの世界観と同期させ、配信限定の圧倒的なお得感(セット販売)を提示することで、視聴者の熱量が冷めないうちに爆発的な購買へと繋げました。
この「ショートドラマで認知させ、LIVEコマースで刈り取る」というハイブリッド施策により、同年のDouyin上での年間GMVは前年比370%超となる33.4億元を記録。
外資系グローバルブランドを抑え、同プラットフォームの化粧品部門で年間トップに輝きました。
この事例が示しているのは、ショートドラマは単なる認知施策ではないということです。
適切に設計すれば、ブランド想起、商品理解、購買意欲、ライブコマースやECへの送客を一体化できる可能性があります。
従来のSNS広告では、広告を見たユーザーをLPへ遷移させ、そこで商品理解や購入を促したため、遷移の過程で多くの離脱が発生していました。
しかし、ショートドラマ×EC(ライブコマース)の文脈では、コンテンツ視聴中にすでに商品理解と感情移入が進み、その熱量のままアプリ内から離脱することなくシームレスに購入が完結します。
つまり、購買前の態度変容からコンバージョンまでが同一プラットフォーム内で一気に起こりやすいのです。
この構造は、CPA(顧客獲得単価)の高騰に悩むブランドにとって大きな示唆を持ちます。単純な商品訴求や価格訴求だけでユーザーを奪い合うのではなく、「ストーリーで感情を動かし、LIVEコマースという完璧な受け皿で熱が冷めない内に回収する」という一気通貫の設計が、今後のSNSマーケティングでは重要になります。
米国市場でも進むマイクロドラマの拡大
ショートドラマの成長は中国だけにとどまりません。米国でも、ReelShort、DramaBox、ShortMaxなどのマイクロドラマアプリ(日本でいう課金型ショートドラマアプリ)が急速に存在感を高めています。
業界レポートでは、中国を除くグローバルのマイクロドラマ市場は2024年に14億ドル規模、2030年には95億ドル規模まで拡大するとの予測もあります。
米国はその主要市場の一つとされ、恋愛、復讐、CEOもの、ファンタジーなどのジャンルが人気を集めています。
また、TikTokもミニドラマ領域への取り組みを進めています。TikTokアプリ内でミニドラマを視聴できる仕組みや、米国・ブラジルで展開されたショートドラマアプリ「PineDrama」など、TikTok内外でマイクロドラマの視聴体験を拡張する動きが報じられています。
この動きは、TikTokが単なる短尺動画プラットフォームから、より長い滞在時間を生むエンタメ・コマースプラットフォームへ進化しようとしていることを示しています。
日本のマーケターにとって重要なのは、ショートドラマを「中国特有の流行」と見なさないことです。スマートフォン視聴、短尺エピソード、強いフック、連続視聴、アプリ内課金や広告モデルとの相性は、国を越えて共通する要素です。
日本のTikTokマーケティングはどう変わるのか
日本市場では、ショートドラマはすでにSNS上で一定の認知を獲得しています。
TikTok、YouTube Shorts、Instagram Reelsのような無料で視聴できるものだけでなく、課金型ショートドラマアプリ「BUMP」などを通じて、恋愛、復讐、職場、家族、ホラー、コメディなど、さまざまな縦型ショートドラマコンテンツが投稿されています。
また、サイレントローンチ、テスト段階の可能性があるものの新たに新規タブ「ミニドラマ」や、ショートドラマアプリへの誘導やカジュアルなミニゲームが楽しめるミニアプリ「TikTok Minis」が導入されておりByteDance社自身がショートドラマを盛り上げようとする姿勢が伺えます。
TikTok Minisの詳細はこちら
TikTokミニアプリ「Minis」が登場!ショート動画の王がゲームとドラマを飲み込む日
2025年6月には日本でもTikTok Shopがローンチされ、動画やライブ配信から商品を発見し、そのまま購入する「ディスカバリーEコマース」の環境が整い始めています。
今後、日本で重要になるのは、ショートドラマを「バズ狙いの動画」ではなく、「マーケティングファネルを短縮するコンテンツ」として設計することです。
これまでのSNSマーケティングでは、認知は動画、比較検討は検索、購入はECサイトというように、ユーザー行動が複数の場所に分かれていました。
しかし、TikTok上で動画、ライブ、商品ページ、購入導線が接続されることで、1つのプラットフォーム内で態度変容から購買までを完結させやすくなります。
このとき、ショートドラマは非常に有効です。商品を単独で説明するよりも、人物、悩み、シーン、感情を通じて商品価値を伝えられるからです。
たとえば、美容商品であれば「肌悩みを抱える主人公が、日常の中で変化していくストーリー」
食品であれば「忙しい生活の中で、手軽さやおいしさが救いになるストーリー」
家電であれば「生活の不満が解消されるビフォーアフター型のストーリー」
このように、商品の機能を物語化することで、広告感を抑えながら購買意欲を高めることができます。
まとめ:ショートドラマは「認知施策」から「購買を生むコンテンツ」へ
海外市場の動向を見ると、縦型ショートドラマは一過性のトレンドではなく、コンテンツ消費とコマースをつなぐ新しい市場として成長しています。
中国では、ショートドラマ市場が映画興行収入を上回る規模に達し、無料広告モデルやEC統合の動きが進んでいます。米国でも、マイクロドラマアプリの成長やTikTokのミニドラマ領域への参入が進んでいます。
日本のTikTokマーケティングにおいても、今後は「短尺動画で認知を取る」だけでなく、「ストーリーで態度変容を起こし、ECやライブコマースにつなげる」設計が重要になります。
ショートドラマとECの統合は、広告、コンテンツ、タレント、ライブ、商品販売を分断せず、1つの体験としてつなげる動きです。
SNSマーケターに求められるのは、単に再生数を追うことではありません。
ユーザーが思わず見続けたくなる物語を作り、その中でブランドや商品を自然に理解してもらい、購入までの導線を設計することです。
ショートドラマは、TikTokマーケティングにおいて、認知施策ではなく「購買を生むコンテンツ資産」として位置づけられていくでしょう。
日本国内におけるTikTokの経済効果が気になる方はこちら
TikTokが日本にもたらす経済効果の推移と今後の展望
参考・出典一覧
・International Trade Administration「China Entertainment Micro-drama Industry」
・China Netcasting Services Association「White Paper on the Development of China’s Micro Drama Industry 2024」関連報道
・Reuters「China 2024 box office revenue plunges as industry downturn deepens」
・Exchange4media「US micro-drama market on track to reach $3.8 bn by 2030」
・Business Insider「TikTok is testing a new micro-drama feed」関連報道
・Business Insider「TikTok launches a new micro-drama app called PineDrama」関連報道
・36Kr「Hongguo Free Short Dramas」関連報道
・TMTPost「4500万成本撬动33亿销售额,微短剧成美妆品牌带货利器」
・Tencent News「4500万成本撬动33亿销售额,微短剧成美妆品牌带货利器」
・TikTok Newsroom Japan「新たな購買体験となる『ディスカバリーEコマース』を実現」
・TikTok Japan公式note「TikTok Shop Japan、ローンチから6カ月」
よくある質問(ショートドラマ活用)
ショートドラマとは何ですか?
ショートドラマとは、スマートフォン視聴に最適化された短尺・縦型の連続ドラマコンテンツです。1話あたり数十秒から数分程度で構成され、恋愛、復讐、ホラー、コメディ、職場、家族など幅広いジャンルがあります。
なぜショートドラマがECと相性が良いのですか?
商品を単独で紹介するのではなく、登場人物の生活や悩みの中に商品を自然に登場させられるためです。視聴者はストーリーに感情移入しながら商品価値を理解できるため、広告感を抑えつつ購買意欲を高めやすくなります。
TTikTokマーケティングでショートドラマを活用するメリットは何ですか?
視聴維持率を高めやすく、ブランド理解や商品理解をストーリー内で促進できる点です。さらにTikTok Shopやライブ配信と組み合わせることで、認知から購買までの導線を短縮しやすくなります。
日本でもショートドラマ×ECは広がりますか?
中国や米国の動向を見る限り、日本でも広がる可能性は高いと考えられます。特にTikTok Shopの普及により、動画視聴から商品購入までの距離が短くなるため、ショートドラマを活用したコマース施策の重要性は高まるでしょう。
studio15編集部
studio15はTikTokの認定代理店としてTikTok Shop支援やクリエイタータイアップなどでこれまで300社以上のマーケティングを支援してきました。その実績をもとに企業向けに最新のトレンドやTikTokノウハウをお伝えする情報を発信しています。
