コラム
2025.10.14
テレビ局がショートドラマをゴールデン枠に投入し大成功——中国から学ぶこと(SNSクリエイターズ#76 株式会社ぬるぬる山下)


■日本のショートドラマは夜明け前——中国ショートドラマの進化と「カオス期」の先にあるもの
――近年、中国のショートドラマ市場は急速に成長しましたが、その現状をどう見ていますか?
山下氏:
中国ではいったんカオス期を経験した後、作品の質が大きく向上しました。日本はまだその手前で、プレイヤーは増えていますが本格的な乱立には至っていません。現状は「夜明け前」といったところでしょう。
特に、中国企業が日本に進出すると、日本人にはない発想や手法が持ち込まれ、新しい風を吹き込みます。その挑戦と試行錯誤がカオスに見える要因です。
■「家族みんなでテレビを見る」がショートドラマで叶った
――中国ではテレビ局がショートドラマを活用した例があると伺いました。
山下氏:
2024年に中国で人気のテレビ局・湖南テレビがショートドラマをゴールデンタイム(19:30〜)に編成したことが大きな話題になりました。
きっかけは2022年にDouyin(中国のTikTok類似アプリ)で大ヒットした「1話5分×24話の縦型コメディ」。この作品を「1話45分×12話の横型テレビドラマ」にリメイクし、当時の主演を続投しつつ、サイドストーリーに人気芸能人をキャスティング。
結果、同時間帯で視聴率1位を獲得し、老若男女がテレビの前に集まるお茶の間回帰を実現しました。
「スマホで1人で見るショートドラマが、家族で楽しむテレビ番組へと進化したことが成功の鍵でした」
この試みはその後7作品以上に広がり、シリーズ化・舞台化・グッズ化などIP展開も進んでいます。
■ショートドラマで商品が売れる。俳優の価値は演技力+販売力
――ショートドラマ俳優の存在感も変わってきたとか。
山下氏:
中国ではショートドラマスターの地位が急上昇しています。
特に注目されるのは、「演技が上手いだけでなく、商品を売れるかどうか」という指標です。広告やPPL(プロダクトプレイスメント)で商品の売上に直結するため、俳優の影響力が可視化されるのです。
上位20名のショートドラマ俳優が広告案件の72.2%を占め、上位3名はそれぞれ13%前後のシェアを持っています。出演料も高額で、日給換算で数百万円に達する例もあります。
ショートドラマ俳優はフォロワーを購買層として連れて来られる。
そのフォロワーの質は芸能人よりモノを買う力が高いのが特徴です
さらに彼らは自身のアカウントでライブコマースを行い、収益源を広げています。
■日本の勝ち筋は「オーガニック×クリエイティブ」
――一方、日本市場への示唆は何でしょうか。
山下氏:
中国は広告投資による成長が主流ですが、作品が増えていくにつれ、広告の単価が上がり制作費を圧迫しているのが現状です。日本はオーガニックなバズを生むクリエイティブ力が強みです。広告費をかけずにヒットを生み出せるstudio15のような制作体制は大きな武器になります。
逆に、日本の文化や感性を活かせば“札束の殴り合い”ではなく、質の高い作品で勝負できるはずです。
中国のやり方をそのまま真似するのではなく、日本は独自の感性で世界が見たことのない作品を作るべきです
■ショートドラマスターという新たなキャリアの可能性
山下氏は最後にこう語ります。
「日本ではショートドラマ俳優はまだ下積みと見られがちですが、先行者利益は大きい。
ライブコマースやPPLを味方につけたショートドラマスターは、次の時代のスターになり得るでしょう」
YouTuberが登場した頃のように、初期は懐疑的な目で見られても、新しいプラットフォームからこそ新しいスターが生まれる——その未来を示唆しました。
まとめ
中国ではショートドラマ×テレビの融合が成功し、IP展開が活発化
俳優は販売力を備えたインフルエンサー型へ進化
日本はオーガニックなヒット創出が勝ち筋
ショートドラマ俳優は次世代スターへの登竜門になる可能性大
ショートドラマは単なる短尺動画にとどまらず、産業構造を変え得る新しいエンタメ領域だといえるでしょう。
studio15編集部
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