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コラム

2025.10.10

中国ショートドラマ最前線:映画市場を凌駕した爆発的成長の裏側(SNSクリエイターズ#75 株式会社ぬるぬる山下)

――コンテンツプロデューサー・山下智博さんに聞く

studio15がSNSクリエイターと共にショート動画とマーケティングのリアルを深掘りする番組「SNSクリエイターズ」。今回のゲストは、中国向けコンテンツプロデューサーとして活躍する山下智博さんです。

2012年に上海へ移住し、翌年から動画配信を開始。フォロワー数は中国で600万人を超え、現在は株式会社ぬるぬるで日中文化交流を推進しながら、中国向けプロデュース事業を手がけています。

 

中国はショートドラマ先進国

――まずは、中国のショートドラマ市場の現状から教えてください。

山下さん:

中国はライブコマースだけでなく、ショートドラマでも圧倒的に先行しています。日本ではTikTokの短いコメディ動画の印象が強いと思いますが、中国では「1話課金型」の本格ドラマがTikTok(中国版は「抖音/Douyin」)上で販売されるのが主流です。

視聴者は無料で10話ほど視聴し、続きを見たければ1話数十円~数百円を支払う仕組み。アプリを切り替えずにそのまま課金できる手軽さが爆発的な成長につながりました。

 

映画市場からシフト、1兆円規模に迫るショートドラマ

――市場規模はどのくらいなのでしょうか。

山下さん:

2023年、中国の映画興行収入は約5,490億円でしたが、ショートドラマ市場は約8,000億円に到達。翌2024年には映画が約4,700億円に減少する一方、ショートドラマは1兆円規模に達し逆転しました。

かつて映画館へ向かっていた観客のお金と時間が、手元のスマホで完結するショートドラマに流れ込んだ形です。

 

コロナ禍で生まれた閉じ込められた映画村発のブーム

――ショートドラマがここまで伸びたきっかけは?

山下さん:

2022〜2023年にかけて、中国ではコロナ禍によるロックダウンで巨大な映画村が外出禁止となったことがありました。

中には役者・スタッフ・衣装・カメラがすべて揃っていたため、「せっかくだからドラマを撮ろう」と始まったのが本格派ショートドラマです。プロの手によるクオリティの高さが話題を呼び、市場が一気に拡大しました。

 

データ主導型の制作と熾烈な競争

――制作体制はどのように変化していますか。

山下さん:

中国ではクリエイティブよりもデータ重視の制作手法が主流です。

「どこで離脱率が下がるか」「どんな展開が次話への課金を促すか」といった指標を分析し、再現性を重視。ヒット作を基にキャラクターや時代設定を変えた作品を次々に制作し、制作会社はすでに1,000社以上、競争は激化しています。

2024年頃には10本に1本がヒットしていた時代から、15〜20本に1本の成功確率まで低下しました。

 

リピート視聴が生む新潮流とクオリティ重視への回帰

――最新のトレンドはどのようなものですか。

山下さん:

近年は課金疲れもあり、1作品を何度も視聴したいというニーズが拡大しています。

調査では、観た作品を2回以上観る人が84%に上り、6回以上観る人も14%。これにより演技力のある役者が「ショートドラマのスター」として支持される現象が起き、制作費をかけて丁寧に作られるウェルメイド作品が増えています。

市場は再びクリエイティブ重視へと回帰し、良質なIPの育成が進んでいます。

 

無料配信モデルと広告収益の拡大

――課金型以外の動きも出ているのでしょうか。

山下さん:

ByteDance(中国TikTok運営会社)は広告収益型の無料視聴プラットフォームも立ち上げました。YouTubeのように広告を挟んで無料視聴を可能にし、ユーザー層をさらに拡大しています。

課金型と広告型の両輪で市場を広げ、今後も成長が期待されています。

 

日本市場への示唆

――最後に、日本への示唆を教えてください。

山下さん:

中国のショートドラマブームはTikTok上でデジタルコンテンツを直接販売できる仕組みがあって初めて成立しました。

日本でも同様の課金機能が整えば、ショートドラマ市場は大きく伸びる可能性があります。既にstudio15さんのように研究・準備を進めている企業は、今後の成長局面で優位に立てるでしょう。

 

まとめ

映画市場を凌駕し、1兆円規模に成長した中国のショートドラマ。

背景には、プラットフォーム一体型の課金システム、データドリブンな制作体制、コロナ禍を契機とした急速な市場拡大がありました。

一方で、成熟とともにクオリティ重視への回帰も始まり、IPとして愛される作品づくりが求められています。

この変化は、まさにこれからの日本市場が直面する未来像でもあるのかもしれません。

studio15編集部

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